2026年1月から大きく変わる!下請法・下請振興法改正のポイント整理
2025年5月に国会で成立した「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」と「下請中小企業振興法」の改正が、2026年1月から本格的に施行されます。
今回の改正は、中小企業・小規模事業者の取引環境を大きく改善するための内容であり、取引先が大企業でも中小企業側がより交渉しやすくなる新ルールが整いました。
■ 改正の背景は「価格転嫁の進まなさ」
- 原材料費・エネルギー費・人件費が上がっても、価格転嫁が進まない
- 発注側(大企業等)が交渉に応じない、価格を据え置く、根拠を示さない例が多い
- 中小企業の経営を守るために「価格交渉を正しく行うルール作り」が必要に
これが、今回の大きな法改正の出発点です。
■主な改正ポイント
① 価格交渉を申し入れたら、発注側は「協議に応じる義務」
- 中小企業が価格交渉を申し入れたら、正当な理由なく拒否するのは法律違反。
- 発注側は、説明資料や根拠を示して誠実に協議する義務が生まれます。
- 価格は一方的に決められなくなります。
➡ 価格交渉の「土俵」に乗せる義務が発注側に課されるようになります。
② 手形払いは原則禁止に
- 手形での支払いは原則禁止となります(猶予措置あり)。
- 電子記録債権やファクタリングも、実質的に現金を受け取れない仕組みはNG。
- 受注側の資金繰り改善が狙いです。
③ 従業員数基準が新たに追加
- 今までの「資本金基準」に加え、「従業員数」でも対象が決まるようになります。
取 引 内 容 | 発 注 側 | 受 注 側 |
製造・修理等 | 300人超 | 300人以下 |
情報成果物・役務 | 100人超 | 100人以下 |
➡ 資本金を減らして適用逃れしていた企業も新たに対象になる可能性があります。
④ 運送取引も新たに対象に
- 荷主と運送会社の取引も今回から下請法の規制対象に含まれます。
- 物流の「荷待ち」「荷役負担」など不公正な取引慣行を是正。
⑤ 取引書面は電子交付が原則に
- 受注側の承諾がなくても、必要書面を電子交付(メール・クラウド等)で提供可能に。
- デジタル化を後押し。
⑥ 減額分にも遅延利息が発生
- 発注側が不当に代金を減額した場合も、60日経過後から遅延利息が発生。
- 減額行為の抑止力が強まります。
⑦ 法律名・用語も変更に
- 「下請事業者」 → 中小受託事業者
- 「親事業者」 → 委託事業者
➡ 法律名も「下請法」という呼び方から変わっていきます。
■ 企業が早めに準備しておくべきこと
発注側(委託事業者) | 受注側(中小受託事業者) |
価格交渉対応体制の整備 | 価格交渉の準備(根拠資料の整理) |
契約書・取引書面の見直し | 交渉内容を記録に残す習慣 |
支払条件の見直し(現金払い化) | 法改正内容の理解と社内周知 |
電子交付システム導入 | 資金繰り計画の見直し |
■ 施行日
- 2026年(令和8年)1月1日施行
施行まで時間があるように見えますが、取引先との契約見直し・交渉ルール作りは今からの準備が重要です。
【参考資料】